制作ノート

観光者向けの新しい道具を計画中です

公開: 2026年7月23日 / 更新: 2026年9月24日 / 書いた人: まえちん(かごいと運営者)

「市電なう」「市バスなう」「桜島フェリーなう」と、鹿児島の公共交通の発車案内シリーズを一通り作り終えて、次に考えているのが観光で鹿児島に来る人向けの道具です。

鹿児島は、市電・市バス・桜島フェリーを組み合わせれば、観光スポットのほとんどに公共交通だけで行ける街です。ただ、初めて来た人にとっては、そもそも「どのスポットに、どの交通機関で、どう行けばいいか」という道順そのものが分かりにくい。地元に住んでいると当たり前に感じることほど、観光で訪れる人には見えていないものです。

だれの困りごとなのか

頭にあるのは、4種類の人です。

クルーズ船で数時間だけ滞在する人。マリンポートかごしまに大型船が着くたびに、大勢が街へ出ます。ただ、港からどんな場所が近く、どう行けばいいのかは、決して分かりやすいとは言えません。滞在時間が限られている中で、道順が分からないだけで行ける場所の選択肢が狭まってしまうのは、もったいないと感じています。

外国から来た人。これは最近、はっきり見えるようになりました。市電の乗り方をやさしい日本語で書いたページを作ったのですが、書いているうちに「知らないと確実につまずくこと」がいくつも出てきたのです。SuicaもPASMOも使えないこと。運賃は降りるときに払うこと。現金で払った人が乗り換えるには、運転士から乗換券をもらう必要があること。どれも、乗る前に知っていないと現地で困ります。

1〜2泊の国内旅行者。鹿児島中央駅に着いて、そこから市内を回る人。おそらくいちばん人数が多い層です。

地元の人が、県外の友人を案内するとき。これは自分のことでもあります。乗り方は知っているのに、どこへ連れて行くか、どう説明するかで毎回まごつく。

4つを並べてみると、共通しているのは「土地勘がない」という一点でした。そして厄介なことに、作っている自分には土地勘があります。何が分からないのかが、自分では分からない。ここがこの道具のいちばん難しいところだと思っています。

足りないのは、経路ではなかった

最初は「経路案内を作ろう」と考えていました。でも、考えるうちに違うと気づきました。

経路を調べる道具は、すでに十分あります。地図アプリに行き先を入れれば、どの電車に乗ってどこで降りるかまで出してくれます。そこに自分が作るものを重ねても、うまくならない。

旅行者が困るのは、その手前でした。

行き先が決まっていれば、経路は出ます。でも、行き先そのものが分からない。「天文館通という電停があるらしい」までは分かっても、そこで降りたら何があるのかが分からない。逆に「維新ふるさと館に行きたい」と思っても、それがどの電停の近くなのかが分からない。

つまり必要なのは、経路検索ではなく逆引きでした。「この電停で降りたら、何があるのか」を答える道具です。

これは、いままで作ってきた3つとは性格が違います。市電なう・市バスなう・桜島フェリーなうは、どれも「いつ来るか」を答える道具でした。次に作りたいのは「どこで降りるか」を答える道具です。

作るなら、電停からの逆引きから

最初のひと塊は、これだと決めています。電停やバス停を選ぶと、その近くに何があるかが出る。それだけです。

この形なら、小さく始められます。交通側のデータは、もう持っているからです。市電の全電停、市バスの停留所789か所、桜島フェリーの両港。位置も系統も、すでに手元にあります。足りないのは、スポット側のデータだけです。

そして、そのスポット側をどう集めるかは、涼しかで一度やったことがあります。県内43市町村の出典を一つずつ当たって、書かれていないことは書かない、というやり方です。あのときに身につけた作法は、そのまま使えると思っています。

それでも、まだ作っていない理由

構想の段階のまま止まっているのには、理由があります。正直に書いておきます。

ひとつは、8つ目のサービスになることです。

技術構成の記事に「揃えるというのは、続けやすくするということ」と書きました。それは本当です。でも、揃えたところで数が増えれば手は増えます。7つでいまのところ回っていますが、8つ目を足したときに同じ密度で面倒を見られるのか。そこがまだ自分で判断できていません。

もうひとつは、需要があるか分からないことです。

これは今あきで学びました。「いま空いてる?」が分かる仕組みは、あったほうがいいはずだと思って作りました。でも、掲載店舗はいまだにゼロです。作れば使われる、ということはない。そう身をもって知ったあとでは、次に手を出すときの足取りは自然と重くなります。

もっとも、これは作らない理由にはならないとも思っています。今あきは需要を読み違えたというより、お店に届ける手段を持っていなかっただけかもしれません。観光者向けの道具なら、届け方はまた違うはずです。

3つ目は、扱う情報の性質です。

「近くに何があるか」を出すとき、観光スポットだけでなく、お店の情報まで持ちたくなります。そのほうが役に立つからです。でもそれは、いちばん鮮度の維持が大変な種類の情報でもあります。

涼しかでは「追加の見落としは気づけるが、削除には気づけない」という問題を踏みました。閉店した施設が地図に残り続ける。同じことが、観光の情報でも必ず起きます。しかも旅行者は、その場所へ行くために時間を使っているので、外れたときの損失が大きい。

だから、始めるとしたら変わりにくいものからだろうと考えています。城山も、仙巌園も、桜島も、来年もそこにあります。お店の情報を足すかどうかは、そのあとで決めればいい。

それでも、作りたい

まだ構想の段階で、具体的な公開時期は決まっていません。

それでも、マリンポートに船が着くたびに大勢の人が街へ出ていくのを見ると、やっぱり何か作りたくなります。せっかく鹿児島まで来ているのに、行き方が分からないという理由だけで行ける場所が減っているとしたら、それは道具で解ける問題です。

「暮らしの寸法に合わせた小さな道具を編む」というかごいとのやり方は、観光で来た人の困りごとにも、そのまま活かせると思っています。形になったら、この制作ノートで改めて報告します。

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