制作ノート

涼しか制作ノート — アラート発令時、行き場はどこにあるのか

公開: 2026年7月19日 / 更新: 2026年9月30日 / 書いた人: まえちん(かごいと運営者)

涼しかを作ろうと思ったきっかけは、自分自身が発令時に困った経験ではありません。ニュースやSNSで、熱中症特別警戒アラートが発令されてもクーリングシェルター(指定暑熱避難施設)の情報がうまく届いていない、という話を見かけたのがきっかけでした。「こういう仕組みがあること自体、意外と知られていないんじゃないか」「知っていても、どこにあるのか調べる手段がないんじゃないか」。そう感じて、現在地から探せる地図を作ることにしました。

現在地から、一番近い「いま入れる場所」を

このサービスで一番大事にしたのは、現在地からすぐ「どこ」が分かるシンプルさです。自治体ごとの情報のバラつきをこちらで吸収して、使う人には「一番近い、いま入れる場所までの距離」だけを見せる。調べる手間をこちらで引き取ることが、この道具の役目だと思っています。

収録の内訳(2026年8月27日時点)
収録している施設750件
収録している市町村36(県内43市町村のうち)
 うち常時開放489件
 うち常時利用の確認なし261件
施設データのない市町村7(情報未確認5・指定を準備中2)

件数は市町村側の更新で動くので、この記事の数字は更新日時点のものです。

どの市町村に何件あって、どこが常時開放なのか——調べて分かったことは、鹿児島県のクーリングシェルターは、どこにどれだけあるのかという記事にまとめてあります。この記事は「どう作ったか」、あちらは「何が分かったか」です。

案内する範囲は、現在地から10km以内に絞っています。県内全域から一番近い施設を出しても、それが100km先なら「行ける場所」ではないからです。

もうひとつ、地味ですが決めていることがあります。あなたの現在地は、サーバーに送っていません。涼しかのサーバーが持っているAPIは「いまアラートが発表されているか」を返す1本だけで、施設のデータは静的なファイルとして丸ごと配っています。距離の計算はすべてブラウザの中で終わるので、どこにいるかという情報はどこにも残りません。

自治体ごとに、情報の形がバラバラだった

作り始めてから一番苦労したのは、データそのものより情報の公開のされ方が自治体ごとにまったく違うことでした。

出発点にした県の資料からして、施設の一覧表ではなく各市町村のページへのリンク集です。しかも版が変わると掲載される市町村が変わり、古い版のURLは404になります。令和8年6月末時点の版で志布志市と龍郷町が新しく載ったので、その時点で両市町を追加しました。県の資料を一度読んで終わり、にはできません。

リンクの先も、形がそろっていません。

県内43市町村を一つずつ当たって、施設のデータがあるのは36市町村でした。残る7市町村も「見つからなかった」で終わらせず、公開情報では未確認が5、参照時点で指定を準備中が2、と分けて記録し、運営者情報のページで開示しています。

もうひとつ決めたのは、「涼み処」という名前だけで常時開放と判断しないことです。出典のページに「アラート発表時以外でも利用できる」と明記があるときだけ常時開放として扱い、書かれていなければ常時利用の確認なしとして区別します。この分類には、発令時に限ると明記された施設と、平常時の利用条件が未確認の施設を含みます。名前は制度を保証しません。

数え漏らしは、自分では気づけない

作業を進めるうちに、いちばん怖いのは読み間違いではなく数え漏らしだと分かってきました。

霧島市は、出典に33施設が載っているのに1件しか収録していませんでした。県内で2番目に人口の多い市で、32件の取りこぼしです。長島町は出典が15施設を挙げているのに14件しか入っておらず、1件が抜けていました。与論町はPDFのリーフレットだけを見ていたため、記事ページのほうにある郵便局2件を落としていました。

どれも、自分で見直しても気づけませんでした。あるものを見て「あるな」と確かめることはできても、無いものは視界に入らないからです。

いまは、出典の表をセル結合まで展開して行数を数え、収録件数と機械的に突き合わせています。見るのは「出典のほうが多い」側だけでよく、データのほうが多い市町村は別ページの出典を併せているだけなので問題になりません。この方法で霧島市の32件と和泊町の4件が浮かびました。

そして、もっと気づきにくいのが逆方向です。追加の漏れはいつか気づけますが、削除には気づけません。姶良市のある温泉施設は、出典に「令和7年8月の豪雨災害の影響により修繕・復旧作業中のため削除しています」と注記が付いたあとも、涼しかには載り続けていました。復旧工事中の施設へ人を案内していたことになります。鹿児島市のあるホールも、備考欄の「工事による休館のため利用不可」を見落として掲載し続けていました。

掲載を外すときも、行そのものは消しません。消すと施設のIDの連番がずれて、誰かが共有したURLが別の施設を指してしまうからです。除外はフィルタで落としています。

つまずいた話

施設名の英語表記でも、同じことをやりました。読みを確認せずローマ字にした結果、祁答院=Keonin(正しくは Kedoin)、陽成=Yonari(正しくは Yozei)、高城=Takaki(正しくは Taki)などが本番に出ていました。読みを間違えると、それはもう別の施設名です。

やっかいなのは、市町村のページを見ても読みが書かれていないことがあることでした。いまは日本郵便の郵便番号データ(町域名のカナが載っています)、郵便局のページ、同じ名前の市立小学校の読みを当たり、確認できるまでは英訳を付けず日本語名のまま出し、読みを確かめられたものから英訳を足していきました。2026年8月15日に、750件すべての英語名がそろっています。

いちばん怖いのは、開いている日を「閉まっている」と案内すること

収録した施設が増えると、今度は「今日その施設が開いているか」の判定が問題になります。ここで何度も間違えました。そして間違いには方向があって、閉まっているのに「開放中」と出すより、開いているのに「閉鎖中」と出すほうが実害が大きいと考えています。行けば入れたはずの場所を、諦めさせてしまうからです。

出水市のある温泉は、出典の休館日の欄が「月(祝・26日は開放)」でした。これを「休館日は月曜日」と読んで、括弧の中は別の注記として持っていたため、月曜が祝日の日(年に7〜9日あります)と、26日が月曜に当たる日を「閉鎖中」と案内していました。出典に「開放」と書いてある日です。

振替の休館日も、出典の言い回しで規則が違いました。「その後の最初の平日」は土日祝を飛ばして次の平日まで進みますが、「翌日」は文字どおり翌日で、その日が祝日でも動きません。これを同じ扱いにしていたため、連休で祝日が2日続く年に振替先がずれ、開いている日を「閉鎖中」、閉まっている日を「開放中」と、両方向に間違えていました。2026年なら5月5〜7日と9月22〜24日、鹿児島市の美術館・図書館や県立博物館など13施設が該当します。起きるのは連休のまっただ中、まさに人が出歩く日です。

図書館は夏に休館日を置かない運用が多い、というのも後から知りました。出典に「8月は、休まず開館いたします」と書いてある。これを読み落とすと、アラート運用期間のど真ん中で毎週月曜を「閉鎖中」と案内し続けることになります。

逆に、出典に無いものを足して間違えたこともあります。南さつま市のある施設は出典が「日曜日」としか書いていないのに、データには「日曜日、休日」と入れていました。平日の祝日に開いているのに「閉鎖中」です。

行き着いた結論はひとつでした。出典の表記を、そのまま入れる。足すのも、分かりやすく言い換えるのも、誤りのもとです。

アラートは、自分で判定するのをやめた

同じ失敗を、もっと大きな部分でもやっていました。

発令時のみ開放の施設が今日使えるかどうかは、熱中症特別警戒アラートが発表されているかで決まります。これを当初、環境省が公開している暑さ指数(WBGT)の予測値から、自分で計算していました。「その区域の全地点が35以上なら特別警戒相当、いずれか1地点が33以上なら警戒相当」という、公式の基準に寄せたルールです。

これが公式の発表と食い違うことに、あとから気づきました。熱中症警戒アラートは前日17時に発表され、その後で予測が下がっても取り消されません。ところが予測値から計算する方式は当日の予測値を見るので、下方修正にそのまま追随してしまいます。

2026年7月1日から8月27日までの58日ぶんを突き合わせたところ、本土で5日、奄美で4日ずれていて、そのすべてが「公式は発令中なのに、涼しかは未発令と表示する」向きでした。安心する側に倒れる誤りです。いちばん出してはいけない方向でした。

いまは自前の判定をやめて、環境省が発表したアラートの内容そのものを読んでいます(電子情報提供サービスが配信する、アラート発表情報のCSV)。判断は環境省がしたものをそのまま使い、涼しかは配るだけです。灰なうで「気象庁が計算したエリアをそのまま使い、方角から扇形を自分で描かない」と決めたのと、まったく同じ考え方に行き着きました。

ここでも、思っていたより細かい話がありました。発表は1日4回(5時・10時・14時・17時)で、翌日ぶんが確定するのは17時の発表です。10時や14時の時点で翌日が「アラートなし」になっていても、それは「特別警戒はない」という意味しか持たず、警戒アラートはまだ判断されていません。そのまま「明日はアラートなし」と緑で出してしまうと、午前中ずっと誤った表示になります(実際に8月10日と22日が、10時・14時の時点では出ていなくて17時に出た日でした)。確定していないものは「まだ分かりません」と出す。ここも同じ考え方です。

涼しかの画面上部。「熱中症警戒アラートが発表されています/涼み処は使えます(クーリングシェルターの開放は特別警戒アラート発表時のみ)(鹿児島県(奄美地方を除く))」という帯と、その下に「あす8月28日は警戒アラートが発表されています/8月27日の発表状況(環境省 8月27日17時発表)」と表示されている。
アラートの表示。「警戒アラート」と「特別警戒アラート」を書き分け、どちらの区域の話なのか、環境省の何時の発表を読んだのかまで画面に出している。
余談

区域の切り分けにも、ひとつ発見がありました。アラートは「鹿児島県(奄美地方を除く)」と「奄美地方」の2区域に分けて発表されます。施設がどちらに属するかを住所で決めるとき、「奄美市と大島郡」で切るのが自然に見えますが、それだと十島村(トカラ列島)を取りこぼします。気象庁の府県予報区ではトカラ列島が奄美地方に含まれていて、環境省のアラート情報でも奄美地方の観測地点に中之島(十島村)が入っているからです。

使ううえで、知っておくと得すること

ここまでは作り手の話です。使う側から見て知っておくと得することを、まとめておきます。

まず、いちばん誤解されやすいところ。クーリングシェルターが「アラートが出たから開く」のは、熱中症特別警戒アラートのときだけです。ニュースでよく聞く「熱中症警戒アラート」は一段下のもので、これだけでは開きません。

そのうえで、実はこちらのほうが役に立つ話です。収録している750件のうち489件は、アラートの有無にかかわらず、開設期間・開放時間内に休館日を除いて利用できると確認しています。市町村が独自に「涼み処」「クールシェア」「涼みスポット」「きりしま涼みどころ」といった名前で、常時開放の場所を用意しているからです。名前も制度も市町村ごとにバラバラで、公式サイトを1件ずつ見ても分かりにくいところですが、涼しかの上ではどちらも同じ画面に並びます。

常時利用の確認状況による分類(2026年8月27日時点)
常時利用の確認なし常時開放
件数(2026年8月27日時点)261件489件
アプリでの判定条件特別警戒アラートの発表と施設ごとの日時条件。平常時の利用は確認できていないアラートの有無にかかわらず、開設期間・開放時間・休館日から判定
呼び名指定暑熱避難施設涼み処・クールシェア・涼みスポット・きりしま涼みどころ など市町村ごと
利用前の確認臨時休館や満員などは反映できないため、施設・自治体の公式案内を確認

運用期間は年度ごとに環境省が発表していて、令和8年度は4月22日から10月21日です。ただし西之表市のように、独自に10月31日まで涼み処を開けている市もあります。だから涼しかの「期間外」の判定は県全体ではなく、あなたの周り10km以内の施設だけを見て決めています。県全体で決めてしまうと、種子島の人が自分の街の涼み処が開いている日に「期間外です」と案内されてしまうからです。

もうひとつ。涼しかが表示する開放状況は、出典に書かれている開館時間と休館日から計算したものです。臨時休館や当日の事情までは分かりません。遠くから向かうときは、施設に電話で確認してから出発してください。詳細画面には出典のリンクを必ず置いてあるので、元の情報もそこから確認できます。

涼しかの施設詳細画面。施設名・住所・開放時間・休館日・受入人数と、出典ページへのリンクが表示されている。
施設詳細の画面。どの市町村のどのページから書き起こしたのかを必ず載せていて、元の情報にたどれるようにしている。

データ更新の頻度は、まだ検討中

公開後の運用として悩んでいるのが、施設データの更新頻度です。クーリングシェルターの開放は熱中症特別警戒アラートの対象期間、おおむね4月下旬から10月下旬に限られるので、月ごとに全自治体を洗い直すような更新は必要ないだろうと考えています。

ただ、市町村ごとに出典が更新されるタイミングがバラバラで、一律の頻度を決めにくいのが実情です。年度替わりにまとめて出し直すところもあれば、シーズンの途中で静かに1件足したり消したりするところもある。全部に同じ間隔で当たるのは現実的ではないし、かといって放っておくと、さきほど書いた「削除には気づけない」問題がそのまま起きます。ちょうどいい頻度は、シーズン中の運用を通して探っていくつもりです。

公開したばかりで、これから

公開したばかりで、まだ反響と呼べるようなものは特にありません。今後どう展開していくかも、正直まだ決めていません。それでも、熱中症特別警戒アラートが鳴ったときに「どこに行けばいいか分からない」と立ち止まる時間を少しでも減らせる道具として、まずは使ってもらえたらと思っています。

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